【文藝春秋】「税金を払っていない大企業リスト」と【日刊ゲンダイ】「消費税10%なら大企業は6兆円のボロ設け」

中央大学名誉教授・元国税庁職員である富岡幸雄氏の「税金を払っていない大企業リスト──隠された大企業優遇税制のカラクリ」は、注目すべき小論文だ。

筆者の富岡幸雄氏は、1925年3月20日山梨県生まれ。中央大学名誉教授。日本の租税学者で文芸評論家である。1950年中央大学法学部卒、同大学院商学研究科修士課程修了後、国税庁、大蔵事務官、国税実査官を経て中央大学商学部教授となった。放送大学客員教授、通商産業省中小企業承継税制問題研究会座長、政府税制調査会特別委員など数々の役職を歴任し、税や会計に関する著作も多い。

1987年の中曽根内閣の売上税導入の際には、同じ「文芸春秋」(1987年3月号)で「税金を払わない大企業リスト」を発表し、9大商社のうち7社が大きな利益を計上しながら法人税を払っていないなど、日本を代表する企業が法人税を払っていなかったことを明らかにし、この記事が反響を呼び、売上税への反対世論を喚起し、廃案に追い込むきっかけになったとも言われる。

富岡氏は、今の国論を二分する消費税増税論議の中で「日本の税制に存在する欠陥が見過ごされている。見過ごすには大きすぎる欠陥であり、この穴をふさぐことで、消費税増税の論議は、新たなステージに進むことになるだろう」と述べている。

その欠陥とは、「大企業や高所得者の資産家に対する優遇税制」にあるという。

イメージ 7日本の法人税は、表向きは「国税である法人税率が30%」「地方税の法人住民税、法人事業税、地方法人特別税を合計した『法定実効税率』は、40.69%」で、外国に比べ「高い法人税率」だと言われ、そうした批判を受けて、2012年4月から38.01%、2015年4月から35.64%と軽減されることになったという。

しかし、「税額は『課税ベース×税率』で加算されるので、現実は課税ベースである課税所得は、「タックス・イロージョン」(課税の侵食化)や、「タックス・シェルター」(課税の隠れ場)により縮小されて、実際の納税額は軽減されている」と富岡氏は述べる。

さらに、「大きな問題点」として、「巨大企業の税負担が極端に軽いこと」とし、グローバル化の中で「国際課税の欠陥により、多国籍化した巨大企業が世界的スケールで税逃れをし、税源を海外流失させ」「結果として、日本の財政は税収減を生じ、歳入調達機能を著しく喪失して、財政赤字の元凶となっている」と指摘する。

また、「企業が実際に負担する法人税額の軽減は、法定税率より、企業利益相当額に対する法人税納付額の割合=「真実実効税率」によって導き出されるべきだ」としてその実態を明らかにしている。

「真実実効税率」でみれば、「資本金100億円以上」の巨大企業の負担水準が最も低く、わずか15~16%の低水準で、法定税率(30%)の半分のレベル。逆に、「資本金5000万円~1億円未満」の中小企業は、最も高い負担水準にあり、28%~29%。中小企業が限りなく法定税率に近いのは、税逃れの温床である海外展開が、中小企業には難しいからだという。

そして次のように述べる。
「高いとされる日本の法人税を、ほぼ法定税率通りに払っているのは、グローバル展開している大企業ではなく、黒字を出した中小企業なのである。日本の法人税の現状は、『巨大企業が極小の税負担』で、『中小企業が極大の税負担』となり、企業規模別の視点では『逆累進構造』となっている。
 こうした不公平が生じるのは、課税ベースである課税所得が政策税制や法人税制の仕組みの欠陥に加えて、税務会計システムのメカニズムなどによりゆがめられているからである。」

私は、さっそく、知り合いの中小企業経営者にこの小論を読んでもらった。「そうなんだよ。われわれ中小は、苦しい中でがんばればがんばるほど税金を持っていかれる。何も抜け道はないんだ。一方、大企業は、抜け道がいっぱいあって、儲けに比べて負担は少ない。おまけに、われわれは、大企業から、どんどん買い叩かれているんだから、三重苦だよ。」と言っておられた。

小論では、「真実実効税率」の実態について、富岡氏の専門家らしい説明で、具体例を挙げている。
「日本の大企業は、喧伝されているより驚くほど安いレベルの税金しか払っていない」と指摘する。

大企業に有利な法人税制の例として、株の配当が課税所得から除外されることをあげる。現在の法人税制は、企業が他社の株式を持っていても、その受入配当は益金に参入しないでもよいとする「受取配当金の益金不算入」という措置を設けている。配当金収入が、会計上は収益として計上されながら、税務上は益金に算入されず、課税所得を算出する際、除外される。

このように、「高い法人税」には、大企業にはいくつもの抜け道と、優遇措置があったのだ。
これらはほんの「氷山の一角に過ぎない」として、法人税課税ベースを下げている要因を列挙し、8つの項目をあげている。

こうした、大企業への課税ベースの低減によって、何が生まれているか。景気後退で経済が低迷し、従業員給与が減少し、法人税収額も下がっているにもかかわらず「企業の内部留保金額は急増している」という。とくに、資本金1億円以上の大企業では、1986年に120兆円だったものが、2007年には350兆円と、3倍に増え、それが現在も維持されているのだ。

同時に、「企業の社会的役割」ということで、「法人税減税の支払い」とともに、「社会保険料(事業主負担)の支払い」と、国民性巣活の基盤である「賃金の支払い」についても企業が担っていると述べ、企業の社会的負担の大きさは、法人税・法人住民税という法人に対する所得課税と社会保険料(事業主負担)に、賃金支払いを加えた負担のレベルで測定すべきだと指摘。それにもとづいて「企業の社会的負担」を国際比較すると、その比率が最も高いのがデンマークで、スゥエーデン、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカと続く。日本の企業は最低のレベルだ。
しかし、経団連は「日本は企業の負担が重い」とばかり言っているのだ。

そのことに関して富岡氏は、「日本の企業の付加価値の配分がおかしくなっているとしか思えない。従業員への賃金は上げず、国にもあまり税金を払わず、ひたすら株主への配当と内部留保の増大に狂奔している」「この風潮は『企業は株主のもの』『経営者の義務は、株主への還元の最大化』というアメリカ型の思想に、経営者と一部の商法学者・会社法学者・会計学者がかぶれているからだろう」と厳しい。
そして、「企業は、従業員や消費者、地域社会とも深いかかわりをもつ『社会的存在』としての企業の本質と使命を忘れてはならない」と述べている。
まったく同感である。

消費税は何に使われたのかという問題については、消費税導入の1989年度から2011年度までの23年間で、消費税の国税分が191兆5377億円。
一方で、法人税は、1989年度をピークに減少し、減少額の累計は、2011年度までに153兆759億円。所得税の、年所得2000万円越の高所得者の減収が2兆円程度と試算され、23年間の累計は46兆円となる。
法人税の減収の累計と、年所得2000万円超の高所得者の減収の累計を合計して199兆円となり、
この額は、落ち込んだ法人税額の合計とほぼイコール。なんということはない。増税分はそっくり大企業と富裕層のための減税に充当されたかたちだ。

欠陥税制を改革して、財源を確保するために、①大企業の内部留保金を復興債に、②公開大企業の「受取配当金無税」の廃止を、③個人所得税の見直し──の緊急提案をしている。
その中で、たとえば「証券優遇税制」による税収漏れは、年約1兆円。また、1984年から7回にわたって、高所得者に適用する最高税率を75%から40%まで引き下げ、累進性のきざみを19段階から6段階に減らす減税が行われた。個人所得税の累進税率のフラット化で、年収2000万円超の高所得者は、1984年に比べて年5000億円以上の増収効果を教授しているという。
これらの、高所得者の減税優遇措置を廃止すれば、年1兆5000億円の税収回復が可能になるという。

最後に、日本の財政が危機的であることに異論はないが、しかし、本当に消費税増税しか手段がないのかと問いかけて、次のように締めくくっている。
「社会保障の基本理念は、『所得再配分』、『富の再配分』である。それなのに、社会保障の財源として、『逆進性』の強い消費税に頼ることは、弱いものいじめになる。むしろ、負担能力に応じて支払う税本来の理念からすれば、これまで述べてきた法人税、も個人所得税の適正な課税を財源にして、社会保障の充実、財政再建を果たすべきではないだろうか。」

詳しくは、そのものをぜひ読んでほしいが、富岡氏の解明と提案は、財政危機と、税・社会保障の打開策を検討する際の最も根本的な問題について世に投げかけたものとして注目すべきだと思う。

もうひとつの注目記事は、本日(4月11日付)の「日刊ゲンダイ」で、「還付金の欠陥──消費税10%なら大企業は6兆円のボロ儲け」と題して、元静岡大学教授で税理士の湖東京至氏のインタビューを載せている。

「増税で潤うのは大企業だけ」としてその“カラクリ”のひとつが「輸出企業への還付金制度」であるとしている。輸出企業には、国内の部品仕入れ段階などで発生した消費税を国が後で戻す仕組みとなっている。輸出分の税率はゼロのため、輪出割合が高い大企業ほど、仕入れ段階の税額と還付金の逆転現象が起きる。
政府の予算書では、こうした還付金は約3兆円(10年度)あり、消費税の総額(約12兆5000億円)の約3割に上るという。「仮に10%に引き上げられれば還付金は単純計算で6兆円にも達する」のだ。

こうした輸出企業の会社を抱えた税務署は徴収する消費税よりも還付金の方が多く「赤字」となっており、「トヨタ本社がある愛知の豊田税務署は焼く1150億円の『赤字』です。税務署はトヨタに毎月、200億円近くを振り込まなければならず、遅れると巨額の利息が付くので大変です」と述べ、「還付金制度を廃止するだけで3兆円の増収になります。増税なんてとんでもない話で、消費税自体を廃止するべきです」とまで湖東氏は述べる。

「文藝春秋」の小論文も、「日刊ゲンダイ」の記事も、大手メディアでは残念ながらお目見えしない中身だ。それどころか、相変わらず「日本は財政破たん」「高齢者を3人で1人が1人で1人ささえなくてはならなくなる」「現役世代の負担が大きくなる」──「だから消費増税が必要」と毎日のように宣伝している。財界や大企業か、財務省か、どなたが増税シナリオを書いていらっしゃるのかわからないが、消費増税10%は、それこそ日本経済と国民の暮らしの破滅へのシナリオだ。

どの世論調査も消費増税に反対が6割で、本日10日付「読売」の世論調査も、ほぼ同じで、賛成35%、反対57%という結果であった。
世論が「おかしいぞ」と言っていても、大手メディアが首根っこを捕まえられて、「増税推進」でしか報道しかできないなら、自由なインターネットの世界で、そして、街で、地域・職場で、「消費税増税が本当に必要なのか──」ということを、お互いが意見を延べ、発信しあってはどうだろう。消費増税はすべての国民が影響を受けるが、特に若い人たちの雇用や生活を直撃するのだ。

ぜひ、日本経済再建と消費税増税の論議が活発に行われ、「新たなステージ」に進むことを心から期待したい。
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